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第5話 運命の扉

2人はある城についた。
クレモン城。フェラン女王が治める城だ。
その女王はどんな願いでも叶えてくれるというのが専らの噂だ。
自分の願いを叶えようと遠くから遙々訪ねる人も少なくない。
・・・だが、ここを訪ねて帰ってきた者はいない。
それでも尋ねてくる人が絶えないのは、人間の欲の深さ故だろう。
うな「つまり、望みの物と引き替えに、魂を取られるって噂だ。
   どうするんだ?俺は死ぬのはごめんだぞ」
念を押しても、すいか帽は聞いてなかったかのように歩き続ける。
うな「・・・仕方無いなぁ、俺もついていってやるよ。
   俺がいないと何もできないんだからな…」
うなはすいか帽の体で城が隠れる位置でついていく。

城は大きな扉で閉ざされていた。
2人は押したり引いたり叩いたりしてみるがびくともしない。
周りを見回してみると、近くに商人の格好をした人がいた。
うな「なぁ、おっさん。この扉開けてくれよ」
商人「私はこの城の人間じゃないぞ。ただのしがない商人だ。
   この城に入れるのは鍵を持ってる奴だけだ。
   その鍵は世界に数個しか無いという鍵なんだ。
   ま、そのほとんどはここに集まってきてるんだがな」
うな「あーあ、誰か鍵持ってないかなー」
うながそう言うと、すいか帽が何かを見ているのに気づく。
うな「何見てんだ?すいか帽」
うなが視線の先を見てみると、一人の少女がいた。
茶色の髪、藍色の目、茶色のワンピース。
とぼけた表情でありながらも目を輝かせてこちらにやってくる。
うな「あいつ誰だ?お前の知り合いか?」
すいか帽は首を振る。
うな「あいつも何かをもらいに来たのかな?」
少女は確かにこっちへ向かってきた。
そして、二人がそこに居ないかの如く、無言のまま扉に近付く。
うな「おい、待てよ。
   ここは鍵を持ってないと開かないんだぜ」
少女「持ってます。」
商人「何!?鍵を持ってるのか!?」
少女「…持ってます。」
少女は繰り返す。考えが読めない。
うな「その鍵、どこで見つけたんだ!?」
少女「分かりません。ポケットの中に手を入れたらこれがありました。」
その鍵を指でつまんでひらひらさせている。
所々に紙くずのようなものが付いているが、金の光沢はしっかりと残っている。
商人「おい、ふざけるのはよせよ!
   お前が鍵を持っているのには、何か理由があるんだろう?」
少女は無視して鍵を開ける。
あの重い門は軽々と開け放たれた。
うな「おい、俺達もこの城に入らせてもらうぞ。」
少女「・・・?」
うな「よっしゃ、行くぜすいか帽!」
うなとすいか帽は少女より先に城に入っていった。

派手すぎる程の飾り付けの施された謁見の間が見える。
うなは兵士に話しかけようとすると、逆に話しかけられてしまった。
兵士「あなた方をお待ちしていました。ささ、こちらへどうぞ」
あまりの都合の良さに少し引く。
うな「なんか話が早いぞ?まぁいいか」
うなとすいか帽は導かれるままに進んでいった。
奥にいるのがフェラン女王であろう。
お世辞にも綺麗とは言い難い。太ってないだけまだマシなのだろうか。
二人が部屋の真ん中まで来ると、高らかに笑い始めた。
女王「オーッホッホッホ!
   私の噂を聞いてきてくれたのね?うれしいわぁ。
   あなたの望みは何かしら?」
うな「いきなり気前いいな。
   なんか怪しいぞ。喋ったらダメだぞ、すいか帽」
すいか帽は仕方なく我慢する。
さすがに死ぬかもしれないという恐怖感があった。
しかし、後ろの方から聞き覚えのある声が聞こえる。
少女「私は焼き肉が食べたいのですが。」
うなとすいか帽は後ろを向くと、さっきの少女がいた。
さっきまでぴったりついて来ていたのだ。
2人は一気に青ざめてしまった
うな「おい!おま・・・」
女王「いいわ、叶えてあげる」
少女「ありがとうございます」
うな「おい!!聞いてるのか!?」
フェラン女王はなにやら手を怪しく動かし始め、呪文を唱える。
女王「テクマクマヤコン テクマクマヤコン・・・」
すると、うなから白い煙が浮かび上がった。
うな「うわっ!!何だ何だ!?」
女王「テクマクマヤコン テクマクマヤコン・・・」
次の瞬間、うなは一枚の大きなハラミ肉になってしまった!!
うな「・・・なんじゃこりゃーーー!!!」
女王「あーっはーっはーっはーっ!!
   どう?あなたのお望みのお肉ですわよ?」
少女「素晴らしいハラミ肉です!!」
うな「ちょっと待て!!元に戻せ!!」
少女「大丈夫です。私がおいしく頂きます。」
目が輝いている。どうやら本気のようだ。
うな「おい!!・・・もういい!俺は逃げる!!」
うなは肉の姿のまま逃げ出した
少女「ああ!私のハラミ肉が!!」
少女はそれを追いかける。
すいか帽は一人取り残された。
女王「あーっはーっはーっはーっ!!
   あなたのお友達はおもしろいですわねぇ。
   ねえねぇ、あなた私の仕事手伝ってみない?」
すいか帽はよく分からないまま女王の横に行った。
女王「いい?私の持っている「変化の指輪」を使うの。
   これを指にはめて念じるだけでいいの。
   え?すいかがたべたい?
   ホホホ、ちゃんとできたら好きなだけ食べさせてあげるわ。それでいいわね?
   え?すいかがたべたい?そう、手伝ってくれるのね。」
部屋の入り口付近に兵士が現れた。
兵士「次の旅人です。」
女王「通しなさい」
兵士「ははっ」
女王「いい?よく見てなさいよ」

謁見の間に一人の剣士がやってきた。
フェラン女王に向けて、明らかに敵意の眼差しを向けている。
剣士「俺の名はキバ。
   お前が悪の妖女だな!!覚悟しろ!!」
女王「あらぁ?私はあなたの願いを何でも叶えてあげられるのよ?
   殺しちゃったら勿体無いんじゃないの?」
剣士「何!?それは本当か!?
   俺は最強の剣士を目指している。
   剣をくれ!!世界最強の、あらゆる物を斬ることができる剣を!!」
女王「いいわ。その望み、叶えて差し上げますわ。
   テクマクマヤコン テクマクマヤコン・・・」
キバから煙が上がり、一本の剣になった。
剣士「・・・すっかり騙されたーーー!!」
女王「あーっはーっはーっはーっ!!あなたのお望みの剣ですわ。
   でもごめんなさい。凡人のあなたを剣にしても、
   なまくらな剣にしかなりませんでしたわ。」
剣士「うわあぁぁーーー!!」
剣にされたキバは一目散に逃げていった・・・
そのすぐ後、女王はすいか帽の方に向きなおした。
女王「はい、変化の指輪を貸すわ。
   指にはめて念じるだけよ・・・」
すいか帽の指に指輪がはめられたとたん、女王から煙が上がり、
あっという間にすいかの姿になってしまった。
女王「…キャーーーーー!!
   誰かこいつをつかまえなさいっ!!」
大勢の兵士がすいか帽に飛びかかる。
しかし、一瞬の内にその全員が西瓜にされてしまった。
周りに転がる西瓜の群れ。すいか帽の目が輝いた。
兵士「うわぁーーーー!!逃げろ!!食われるぞーーー!!」
元が何であれ、西瓜は西瓜。
すいか帽は逃げまどう西瓜たちを追いかけていった。

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