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第6話 二人だけの笑い

その頃、うなは少女から逃げ続けていた・・・
うな「ここまで来れば・・・大丈夫か・・・」
少女「大丈夫ですね」
うな「ひぎゃっっぅ!!!いたのかよ!!」
少女「逃げないで下さい!・・・キャッ!!」
と、少女はやや厚底の靴のせいで転んでしまった。
起きあがる気配はない、それどころか、悲痛な面持ちでこちらを睨んでくる。
少女「うぅ・・・」
うな「悪いな、俺は逃げるぞ!!」
倒れたままの少女を見て良心が痛むが、命が先決である。
走っていると、城の中の売店を見つけた。
うな「なぁなぁ、なにか呪いを解くようなアイテムはないか?」
売店の店員は、走って喋るハラミ肉を前にしても驚く様子は全くない。
商人「さては、フェラン女王にやられましたな?
   女王は「変化の指輪」を持っていて、
   それがないと元の姿には戻れないんですよ。」
うな「くそー。またあの部屋に行くしかないな・・・」
そこへ、すいかの群とすいか帽が走ってきた。
すいか帽は、走っていたそのままの勢いで商人を西瓜にしてしまった。
…彼の右手の指には、きらりと輝く例の指輪が深くはめられていた。
うな「何でお前が変化の指輪を持ってるんだよ!!」
逃げまどう西瓜に狂喜するすいか帽の前に滑り込んで立ちふさがるうな。
うな「すいか帽!俺を元の姿に戻してくれ!!」
すいか帽は不気味な笑みを浮かべた。
次の瞬間、うなの体から煙が上がり、あっという間に西瓜姿になってしまった。
うな「っておい!!・・・助けてくれーーーー!!」
身の危険を感じたうなは逃げた。すいか帽はそれを追いかける。

少女「私のハラミ肉・・・ぐすん。」
少女はやっと涙を拭いつつ、よろめきながら立ち上がった。
辺りを見回すと、西瓜となったうなとすいか帽が走ってくる。
少女「私のハラミ肉を知りませんか?」
うな「おいお前、よく聞け!!あのすいか帽子の男は指輪を持っている。
   それを奪え!!奪わなければやられるぞ!!」
少女「焼き肉は食べられますか?」
うな「・・・あとで食べさせてやるから!急げ!」
少女「やります!!」
次の瞬間にはもう、少女の足は地面から離れていた。
そして、少女は信じられないほどの身軽な動きですいか帽の指輪を奪った。
うな「よし!それで、俺に向けて念じるんだ!「元の姿に戻れ」って!」
それを聞き、少女は念じた。
少女「私は焼き肉が食べたいのっ!!」
うな「なんじゃそりゃーーーー!!!」
煙と共に、うなはまたもやハラミ肉にされてしまった。
また次の瞬間、後ろに忍び寄っていたすいか帽は少女の指から変化の指輪を奪った。
少女「ゆ、指輪を盗られました!」
だが、すいか帽は手を滑らせて・・・。
 パリーーーーーン
乾いた音が響き渡る・・・。
うな「・・・?何か破片が飛んだぞ?どうしたんだ?」
少女「・・・指輪、壊れました」
うな「何ーーー!!?」
自分の姿はハラミ肉。変化の指輪は粉々。
ついに彼の運命は決まってしまった。
うな「俺は一生ハラミ肉のままなのか!?」
少女「私が食べます。」
うな「食べるな!!
   ・・・くそ、何とかして元に戻る方法を見つけないとな。
   竜の玉を集めれば戻してもらえるかな?」
少女「そう言えば、この城の地下に竜の玉があると聞いたのですが」
うな「よし、それを取りに行こう」
少女「竜の玉はタレですか?醤油ですか?」
うな「ポン酢だ」
少女「あっさり系ですね」
うなはこの会話に呆れながらも進んでいった。


うな 「俺はうな。こいつはすいか帽。
    で、お前の名前は何だ?」
少女 「「かるび」です」
うな 「「かるび」!?
    最悪なネーミングセンスだな。
    親の顔が見てみたいぜ・・・」
うなはそうつぶやいた。
かるびには聞こえてなかったようだが。
すいか帽は、かるびも覚えておくことにした。
記憶力が悪いと不便なこともある。
なぜうなの名前より早く覚えられたのかまでは気にしなかったが。


クレモン城の地下。
ほぼ水路になってるここには凶悪なモンスターもいる。
そのモンスターとの戦いの中、かるびは神官魔法を使える事が分かった。
神官魔法の回復により、連戦での傷も消えていった。
うな 「いや〜、それにしても長い通路だな・・・」
かるび「どこまで行けばいいんですか?」
うな 「竜の玉のあるところまで行くに決まってるだろ」
かるび「ポン酢は持ってないんですが」
その時、目の前の闇の中から巨大なコウモリが現れた。
コウモリはめまいのしそうなテンポで話し始める。
蝙蝠 「ワ・レ・ハ・リュ・ウ・ノ・タ・マ・ヲ・
    シュ・ゴ・ス・ル・モ・ノ・ナ・リ」
かるび「うなさん、このコウモリは食用ですか?」
こんな時でも食べ物の話。先程までもずっとそうだった。
うな 「気持ち悪いから聞くなよ・・・
    だいたい、そんなことわかんねぇよ。」
かるび「すいか帽さんは分かりますか?」
うな 「俺に分からなくてこいつに分かるもんか」
すいか帽は首を振る。
相変わらず無表情だが、ややつまらなさそうだ。
蝙蝠 「リュ・ウ・ノ・タ・マ・ハ・ワ・タ・サ・ナ・イ」
うな 「よし、コイツを倒すぞ!!」
コウモリはうなを見つめ、不思議な光を発した。
半透明のその光はうなの体をゆっくりと包んでいった。
うな 「な・・・体が・・・」
なんと、うなの体は動かなくなってしまった!
心配して慌てるすいか帽。
それを余所に、かるびはコウモリに向かっていく。
それに驚いたすいか帽は、慌ててかるびの前に出た!
と、コウモリはすいか帽に噛みつき、血を吸い始める!
かるび「すいか帽さん!!」
すいか帽はやっとの思いでコウモリを振り払った。
コウモリは充分血を吸ったようだが、すいか帽はまだ戦える。
かるび「待って、傷が……恩恵!!」
彼女の手から無数の白い光の粒が放たれ、すいか帽の傷へと向かう。
すいか帽の血の跡は光に包まれて、血は止まり、傷口が塞がっていく。
痛みも止まった。
すいか帽は真っ直ぐ敵を見据え、コウモリに斬りかかった。
コウモリは真っ二つに斬られ、すいか帽から吸った血を撒き散らしながら水路に落ちていった。

うな  「ふぅ、やっと動ける・・・
     あれ?もう倒したのか?」
かるび 「倒しました。」
2人はうなの事など気にもとめずにニコニコと微笑んでいた。
うな  「・・・どうしたんだ?2人とも。そんなにうれしいか?」
かるび 「・・・・」
うな  「何だよー、何で笑ってるのか教えろよー。」
すいか帽「・・・」
その微笑みの理由が分からないうなはつまらなさそうだ。
だが、当の二人も理由など分からなかった。ただ微笑んでいた。
三人は奥にある竜の玉を取り、クレモン城を後にした…。

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