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第12話 洗脳

3人はある町に着いた。
ここはマルメゾンの町。
何のトラブルも無く平和な町。
…だったのだが、3人が着いた頃には状況は一変していたようだ。
うな 「何だこの町は…?」
かるび「焼き肉屋がどこにもありません!」
うな 「っていうか…」
なんと、見渡す限り「りんご屋」の看板が。
うな 「りんご?何でりんごなんだ?
    …すいかが食べたい?
    すいかもどこかにあるかな?」
すいか帽がそう言うと、大勢の人が建物の中から出てきた。
商人 「おい、お前今すいかが食べたいって言ったろ!?」
青年 「…また言ったな!!お前、大変なことになるぞ!!」
彼らは口々に叫び始める。
3人が気付くと大勢の人に囲まれていた。
まるで野次馬のように3人を囲んでいる。
しかし、全員5mほど離れている。
男  「りんご夫人に殺されるぞ!!」
うな 「りんご夫人って誰だよ」
商人 「あぁ、もうダメだ、お前達おしまいだ…」
男  「今からでも遅くない!!早く「りんごが食べたい」って言え!!」
うな 「はぁ?お前ら何言ってるんだ?」
すいか帽が「りんごが食べたい」など言うはずもない。
逆にすいか帽は「すいかが食べたい」と言ってしまった…
 「…!! みんな逃げろ!!!」
3人を囲んでいた大勢の人は一目散に3人から離れていった。
そして数秒もすると、辺りは人気の全く無い殺風景な町に変貌した。
うな 「何だったんだ?」
かるび「向こうから何か来ますよ」
かるびが指さす方向から、何やら光る物が飛んできた。
そして轟音と共に近付いてくるのは…炎。
うな 「ヤバイ、避けろ!!」
3人は素早く物影に隠れて炎から逃れた。
幸い、周りの建物に火が移ることがなかった。
3人は何故炎が飛んで来たのか分からないまま進んでいった。


3人が進んでいると大きな屋敷が見えてきた。
あちこちに兵士が配置されていて物々しい雰囲気である。
うな 「誰の屋敷なのかな?」
すると、後ろから一人の女性がやってきた。
女性は3人をまじまじと見てから慌てて言った。
女性 「あの、皆さん、あぷるを助けてくれませんか?」
うな 「あぷるって誰だ?」
女性 「この屋敷にいるんです。
   あぷるは私の親友です。
   あぷるはりんごが大好きで、いつもそれを食べていたの。
   ですがある日、あぷるは顔がりんごになってしまったの。
   そして町のみんなに「りんごを食べなさい」って命令するようになって、
   みんなからは「りんご夫人」と呼ばれるようになったの。
   私はあぷるを助けたいんです。
   力を貸してくれませんか?」
3人は、「顔がりんご」という部分にだけ集中してしまっていた。
うな 「顔がりんご!?スゲー!!」
かるび「食べられますか!?」
好奇心に負けた2人の言葉に、女性は思わず顔を引きつらせる。
だが、この3人を救世主だと信じている彼女は諦めない。
女性 「…助けてくれますか?」
うな 「助けてやってもいいけどな。」
女性 「ありがとうございます!
    必ずあぷるを元に戻して下さい!」

3人はとりあえず屋敷に行った。
りんご夫人の屋敷は町の中心に建てられている。
もちろん、りんご夫人がこの町を治めている訳ではない。
入口に兵士はいなかったので見つかることはなかった。
うな 「余裕だな。」
かるび「早くりんごの顔を見て、焼き肉が食べたいです」
うな 「まだ言うか…」
しかし、屋敷の廊下を歩いているところで1人の兵士に見つかってしまった。
兵士 「お前達!!どこから入った!!」
うな 「普通に入口から…」
兵士 「で、何の用だ!」
うなは横目でかるびに何か案はないか求める。
かるび「ピ、ピザーナです。ピザをお届けにまいりました…」
兵士 「何!?ピザだと!? 貴様!りんご以外を食べろと!?」
うな 「り、りんごのピザなんだよ!」
うなは慌てて付け加えた。
兵士は疑うこともなく3人にりんご夫人の場所を教えた。
途中、何度も兵士に出くわしたが、同じ嘘で誤魔化した。
そして3人はりんご夫人の部屋に着いた…
3人はついに「顔がりんご」を見たいがためにこの部屋まで来てしまった。
部屋には兵士はいないようだ。

かるび「りんごの顔ってどんな感じなんでしょうか?」
うな 「もうすぐ見れるんじゃないのか?」
???「そこにいるのは誰!?」
奥の方から声が聞こえる。
そして間もなく、例のりんご夫人が現れた。
3人は驚くのには苦労しなかった。
うな 「スゲー!顔がりんごだ!!」
真っ赤に輝き、食欲を刺激する顔。お世辞にも綺麗とは言えないが。
りんご「あなた達、ちゃんと毎日りんごを食べてますか?
    え?すいかが食べたい?」
うな 「おい!何言ってるんだよ!!」
すいか帽はつい口走ってしまった。
うなはすいか帽の口を塞ぎながら、恐る恐るりんご夫人の表情を伺う。
もちろん許されるわけがない。
りんご「許せませんわ!お仕置きです!!」
りんご夫人はどこからともなく札を数枚取り出し、呪文を唱える。
うな 「仕方ない、目を覚まさせるしかない!」
3人はりんご夫人に攻撃する体勢を取る。
しかし、りんご夫人は既にいくつもの呪文を唱え終わっていた。
りんご「鎌鼬符!!」
3人は強風に吹き飛ばされ壁にたたきつけられた。
気付くのに時間がかかったが、風の斬撃で無数の傷を受けてしまった。
りんご「燃火符!!」
炎の弾はうなに向かっていく。
しかし間一髪で避けられた。
りんご夫人は何度もうなに燃火符を放つが、全て避けられる。
その隙に、すいか帽はりんご夫人の後ろに忍び寄り剣を振る。
りんご夫人は素早く避けたが、腕から血が出て、短い悲鳴を上げてその場に倒れ込んだ。
かるびの神官魔法で血はすぐに引いた。
さすがにこの顔をずっと眺めているわけにはいかない。
3人は部屋を眺めながらりんご夫人が目を覚ますのを待つことにした。

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