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第18話 動き出す運命

うな 「おーい!すいか帽!!
    ったく、どこに隠れてるんだ?」
かるび「壁の中を探しましょう」
うな 「そんなところに隠れられるわけないだろ」
2人はいなくなったすいか帽を探していた。
あのすいか帽がこの狭い廊下のどこに隠れるというのだろう。
2人が目を離した隙にすいか帽はどこか別の場所に落ちていったのだ。
2人はすいか帽が現れるのを待つことにした。
が、かるびが壁にもたれかかった瞬間、またもその壁が回転した!
そして、かるびはバランスを崩して落ちそうになるが、
うながとっさにかるびの手をつかんで支える。
うな 「かるび、大丈夫か!」
かるび「うなさん!後ろ!」
うなが僅かに後ろを振り向いたとたん、
回転していた壁がそのままの勢いで2人にぶつかってきた。
2人は壁に吹っ飛ばされ、すいか帽と同じように落ちてしまった…


少年 「おい!おい!しっかりしろ!」
うなが目を覚ますと、そこは見るも無惨な廃墟。
だが、先程とは状況が全く違う。
幾人もの人間がそこら中に倒れている。
中には四角い石の中で微動だにしない人間もいる。
うな 「おい、ここはどこだ?」
少年 「ここはキルフェボンだぞ?」
うな 「キルフェボン?キルフェボンってあの…?」
少年 「お前ら、よく生きてたな。
    俺の名はタヒチだ。
    今、西瓜柄の帽子のヤツがかぎ魔王に連れて行かれたんだけど、」
うな 「す、すいか帽が!?」
タヒチ「知り合いか?」
うな 「知り合いって言うか、さっきまで一緒にいたんだけど。」
タヒチ「とにかく、それで、
    そのかぎ魔王の兄が3体も現れてこのザマだ。
    もうどこかに行ったみたいだから大丈夫だけど、
    生き残りは俺達だけみたいだ。」
うな 「よく分かんないけど、すいか帽が連れて行かれたんだよな?
    その、何とか王に。」
タヒチ「かぎ魔王だ!
    世界7魔王の一人で、とんでもない強さなんだ!」
うな 「せ、世界7魔王?」
うなはこの言葉を聞いたことは無いが、
とんでもない強さだということは勘でも分かる。
かるび「食べられますか?」
うな 「お前がな。
    で、タヒチ。すいか帽はどこにいるんだ?」
タヒチ「確かオーボンとか言ってたぞ。」
タヒチはかぎ魔王に吹っ飛ばされたものの、意識は失っていなかった。
そのまま死んだフリをして話を全部聞いていたのだ。
うな 「オーボン…かなり遠いんじゃねーか?
    どうやって行くんだ?」
タヒチ「大丈夫。俺は船が使える。
    俺がそこに連れていってやる。
    だけど、かぎ魔王はかなり強いぞ。
    それに、「かげ魔王」ってのもそこにいるって言ってた。」
うな 「今度はかげ魔王か。どんなやつだ?」
タヒチ「分からない…。
    ただ、伊達に魔王を名乗ってはいないと思う。
    かぎ魔王は鍵の力を使うから俺が必要になると思う。」
うな 「とにかく、すいか帽を助けに行くぞ!」
かるび「焼き肉は食べられますか?」
タヒチ「よし、早速準備するぞ。
    早くしないとすいか帽が殺されるかもしれない」

オーボンとキルフェボンは大陸の反対側にあるらしい。
歩いていくのも船で行くのもかなりの遠さだ。
だが魔物が出ないであろう海の方が安全だ。
3人は船と装備の準備を済ませると船でオーボンに向かった。
誰一人生き残っていないようなので、使えそうな武器や道具をありったけ持ち出した。
すいか帽を救出するために…


その頃、すいか帽はオーボンに連れて行かれていた。
かぎ魔王はすいか帽を担いで飛んで移動している。
すいか帽は目は動くので周りの光景に目を移す。
もう日は完全に沈んでいる。
山と繋がる高い塔が目に入る。
周りにはいくつか小さな城も見える。
かぎ魔王「着いた、オーボンだ。」
と、その時、凄まじく轟く爆音と共にオーボン一帯が吹き飛んだ!
かぎ魔王「チッ、あいつか、かげ魔王…」
かぎ魔王は舌打ちする。

火は上がっていないものの、時既に遅し。
オーボン一帯は瓦礫の山と化していた。
そしてすいか帽はその瓦礫の山の頂上に人影を見つける。
金髪で橙の服。
手をポケットに入れてやや上を向いている。
背も高く、現代で言う色男である。
かぎ魔王はその男から数十メートルほど離れた場所に着地する。
かぎ魔王「連れてきた。この男だろう?」
金髪男 「フッ、間違いないな。
     たまにはやってくれるじゃないか。」
この男は何者だろうか。
かぎ魔王を完全に見下している事が見て取れる。
その不適な笑みを絶やすことがない。
かぎ魔王「かげ魔王。いつも言うが、言葉の使い方を分かっているのか?」
かぎ魔王は不機嫌そうに言う。
どうやらこの男がかげ魔王らしい。
どこが魔王なのかは見ただけでは分からない。
どう見ても普通の人間である。
違うところと言えば、目である。
黄色く輝く、血に飢えた獣のような目だ。
かげ魔王「ほう、俺に言葉遣いに気をつけろと?」
かぎ魔王「他にどう取る?」
かげ魔王「お前が言う言葉か?
     俺とお前の実力の差はそんなもんじゃ無いはずだぞ。
     お前は頭をつけて土下座しててもいいくらいだ。
     そんなお前が?笑わせるなぁ?」
すいか帽は元々身動きがとれないが、この険悪な雰囲気ではさらに動けない。
かぎ魔王「とにかく、この男をどうするんだ?」
かげ魔王「もちろん殺す。
     だが、どうせなら一戦交えてみたいな。
     最近少しなまってしまっているんでね。」
かぎ魔王「なぜこんな男をわざわざ殺すんだ?」
かげ魔王「そうか、2人とも説明がまだだったな。教えてやろう。」
暗闇の中、動けないすいか帽と一歩も譲らない魔王2者。
静寂の中、かげ魔王は不適な笑みを浮かべたまま話し始めた。

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