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第27話 最後の輝き

すいか様「思い出したんだね」
すいか帽「!!」
すいか帽は、少しの間立ち尽くしていた。
そこまで長くはなかったものの、やはり不思議がられるのも無理はない。
うな  「すいか帽、コイツはなんなんだ?」
すいか様「すいか帽?それは誰だい?」
うな  「え、この西瓜の帽子の…見りゃ分かるだろ?
     俺がつけたんだけどな。」
すいか様「そうだよね、別の名前が付くのも無理ないよね。
     ずっと記憶がないまま旅をしてたんだからね。
     それに、西瓜太郎クンは喋ることはできない。
     あの時、キミは記憶も言葉も完全に失ってしまった。
     だけど、僕は西瓜太郎クンの意識の中のあの言葉だけは残しておいた。
     それが…」
かるび 「焼き肉が食べたい…」
うな  「それはお前だろ」
すいか様「「すいかが食べたい」…、キミのためにもそれだけは残したんだ。
     だから西瓜太郎クンはここまで来れた…」
うな  「すいか帽は西瓜太郎クンなのか?」
すいか様「そう言うことになるね。僕も厳密には西瓜太郎なんだけどね。」
うな  「何言ってるかさっぱり分かんねぇ」
すいか様「おっと、こんな事話してる場合じゃないんだよね。」

闇の王 「話は済んだか?」
すいか様「闇の王、キミは闇を統べる王を名乗っていたよね。
     だけど、キミにそんな実力があるのか聞きたいところだね。」
闇の王 「私は不死身だ。誰にも私を倒せない。
     それ故私は、誰よりも上に立てるのだ。」
すいか様「じゃあ、僕が消してあげるよ。」
うな  「おい!無茶だって!」
すいか様「西瓜太郎クンの代わりに僕が戦う!」
そう言うと、すいか様は両手を闇の王に向ける。
すると、すいか様の頭上に無数の西瓜のような物が現れる。
すいか様「立ってられるかな…?」
彼の頭上の西瓜が一気に闇の王に向かって飛んでいく。
闇の王 「私は不死身だ!そんな攻撃…」
そう言ったか言わないかの内に、闇の王にその西瓜が当たっていく。
だが…何という威力だろうか。
1つ1つが闇の王の体を貫いていく。
闇の王 「クッ…ケアルーガ!」
闇の王はその傷を癒するが、西瓜は止まらない。
次から次へとどんどん現れる。
闇の王 「な…なんだと…、間に合わない…」
回復する間も無く、闇の王の体は全て貫かれ、木端微塵になり消え去った…

うな  「…やったのか?」
すいか様「そうみたいだね。」
うな  「で、竜の玉は…?」
すいか様「キミたちが探しなよ。ボクは帰るからね。
     …また会おうね、西瓜太郎クン…」
そう言うと、すいか様は風に姿を消した…。
うな  「…すいか帽…、すいか帽はすいか帽だよな…。」
すいか帽は何を言われているかよく分からなかったが、頷いて返した。


かるび「向こうの扉ですか?」
うな 「そうみたいだな。」
3人は扉の前まで行く。
そして、取っ手を勢い良く引っ張り、扉を開ける。
そこには…
兵士 「おめでとうございます。
    お見事! 竜の玉を授与します。」
竜の玉を大事そうに持つ、兵士の格好をした人間がいた…。
うな 「…なんじゃそりゃ…」
兵士 「私たち冒険者協会は、このオーボンから出発するのです。
    このダンジョンは、
    我々冒険者協会の、記念すべき第一のオリジナルダンジョンなのです。
    そして、あなた方が私たちの試練を突破した第一の勇者なのです。
    お受け取り下さい。」
かるび「こんな所までお疲れさまです。」
そう言うと、かるびが竜の玉を受け取る。
…だが、腑に落ちない。
うな 「何で竜の玉を持ってるんだよ。」
兵士 「まだ疑ってるんですね。
    この竜の玉は我らオーボンの兵士が見つけたものです。
    王国の栄えの象徴として奉られていた時期もありました。
    それにしても、竜の玉を取られたんだからもう城に戻らないと行けませんね。
    次の景品は何でしょうかね。」
うなは少しためらったが、一息して兵士に言う。
うな 「…言っとくけど、オーボンはもう無いぞ。」
兵士 「……と、言いますと?」
うなはこれまでの詳細を簡単に話した。
兵士 「…そんな…オーボンには私の家族もいるのに…」
うな 「お前が助かっただけいいって。」
兵士 「…そうですかね…」
うな 「ずっとここにいても誰も来ないし、上に行こうぜ。」
兵士 「いえ…私はここに残ります。
    無くなってしまった故郷を見るのも辛いですから…」
うな 「…俺達は関係ないからいいけどな」
3人は奥の扉を開け、そこの階段を上って地上に向かった。

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