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第32話 ウキーッ!!

3人は案内係の猿のいるところまで走る。
案内の猿は腕を組んでこちらを向く。
さる 「集合時間、とっくに過ぎてますよ」
うな 「知るかよ。
    大体、この広さでこの時間は無いだろ」
かるび「焼き肉屋は無いんですか?」
さる 「全く、これだから人間は…」
うな 「俺は人間じゃないぞ。」
さる 「とにかく、出発しますよ。」
もめ事が起きたにも関わらず、案内の猿はほとんど無表情だ。
猿のような鳴き声を上げるところは未だに見られない。
3人は大きな猿と少し距離を置いてついて行く。

さる 「ご覧下さい!」
案内の猿が手をかざす方向を見れば、珍しく人間が数人いた。
皆重そうな物を運んでいる。
さる 「この惑星では、人間は虫けら同然!
    捕まえた人間は、ここで奴隷として働かせているのです。」
3人はただ呆然としていた。
さる 「働け働け!!ぼろ雑巾のように働け!!
    いやぁ、愉快ですねぇ。」
案内の猿はにこやかな営業スマイルでこちらを向く。
さる 「さてと、先へ進みますよ。」

案内の猿は3人より早足で先を進む。
途中、また横の川に自由の女神が立てられていた。
3人は案内の猿に追いつこうと急いでいたので、自由の女神を見ても何も思わなかった。
だが、案内の猿が急にこちらを振り返る。
さる  「あーあ、やっちゃった。」
うな  「今度は何だ?」
さる  「あなた達!!
     自由の女神を見ても驚かなかった!!」
先程聞いたばかりの言葉。
まさか再び聞かされるとは…。
うな  「な…じゃあ、何だ…
     自由の女神の横を通る度に驚かないといけないのか!?」
さる  「当たり前じゃないですか!!
     じゃ、私は逃げますから!」
そう言うと、案内の猿はすぐ近くの林の影に風のように走り込んだ。
それと同時に、女神像が叫ぶ。
女神  「キシャーッ!!!」
そしてやはり、たいまつを振り下ろしてくる。
うな  「マジかよっ!!」
かるび 「加護!!」
今度は避ける必要は無くなった。
女神像の攻撃は虚しく土を巻き上げる。
うな  「よし、総攻撃を……?」
よく見ると、女神像のたいまつの先に光が集まり始めている。
女神  「女神レーザー!」
女神の声とは言い難い叫び声とともに、たいまつの光が一気に膨張する。
そして、そこから白い閃光が、女神像を中心に地面にアーチを描くように放たれる。
すいか帽とかるびは何とか避けたが、またも攻撃はうなに命中した。
光が当たった腕には火傷のような跡が残った。
うな  「何なんだあの攻撃は…」
うなが傷を押さえて女神像を見ると、たいまつに再び光が集まり始めている。
うな  「すいか帽!!さっさと叩き斬れ!!」
すいか帽「停止剣!」
すいか帽の剣の周りの景色が少し歪む。
そして、すいか帽は女神像の目の前で剣を振る。
その威力は少しひびが入った程度だった。
だが、それだけでは無かった。
女神像の周りの景色が一瞬歪み、乾いた音が響き、女神像は全く動かなくなった…。
女神像のたいまつに集まった白い光は煙のように抜け、形を失った。


茂みから案内の猿が現れる。
さる 「次からはちゃんと驚いて下さいよ。
    さぁ、いよいよこの先はさる魔城です。
    世界7魔王の一人、恐怖のさる魔王様のお住まいです。」
その時、かるびの口に溜まっていた涎が音を立てて地面に零れ落ちる。
かるび「あの、さる料理はまだですか?」
さる 「…は?何のことですか?」
かるび「さる食べ放題と聞いてここに来ました。」
2人が止めようとしたときには既に遅かった。
さる 「ひょっとして、あなた達…
    私達を食べに来たんですか!?」
うな 「お、俺は食べないぞ。」
かるび「はい。いただきます。」
うなの必死の答弁も虚しく、かるびは全てを口走ってしまう。
案内の猿の表情が一変した。
みるみる真っ赤になっていく。
さる 「ウキーッ!!あなた達、何て悪い人間ウキーッ!!
    成敗するウキーッ!!」
突然、今まで見た猿達と同じ鳴き声で怒鳴り散らす。
さる 「ウキーッ!!そこの者、力を貸すウキーッ!!」
番さる「ウキーッ!!」
猿はすぐ近くにいた緑色の門番の猿を呼ぶ。
うな 「ウキーな本性を現したな。
    さて、どうする?」
かるび「いただきます。」
男2人は至って冷静だが、かるびの涎は止まらない。
緑の猿は数ステップ間合いを取って、こちらに飛びかかって来た。
かるび「燃火符!!」
番さる「ウギャーーーッ!!!」
かるびの食欲の炎が猿を包み込む。
そして、数秒も炎に包まれると、その猿はこんがりと香ばしく焼けた…。
かるび「さるの焼き肉です。いただきます。」
かるびは満面の笑みでそれに食らいつく。
そして、あっという間に全てたいらげた。
さる 「何て事だウキーッ!!
    悪い人間どもにこの惑星が侵略されてしまうウキーッ!!
    お前ら、許さないウキーッ!!
    少し待ってろウキーッ!!」
かるび「ウキーッ!」
うな 「マネするなよ。
    気持ちは分からんでもないが。」
猿は城の中へ猛スピードで走り込んでいった。
かるび「もっとさるが食べたいです。」
うな 「俺は食べたくないんだけどなぁ。」
空には、乾いた太陽が浮かんでいる。

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