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第34話 サル時空

??「う〜ん…あれ?
   ここはどこでしょうか?」
見ると、ここは山の奥の林の中のようだ。
??「一体何がどうなって…
   あ、そうか、神竜様が…」
そう、彼はあの時の神父だった。
神竜によってすいか帽達と一緒にワープさせられたのだ。
神父「確か、すいかの柄の帽子の男の子がいたような…」
と、林の終点が目に入る。
神父「林を抜けると、そこは何でしょう?」
が、これには神父も愕然とした。
右も左も猿、猿、猿。
神父「……っ」
神父はさすがに恐ろしくなってすぐに数歩後ろの木の影に隠れた。
神父「さ、さささささ…猿!?」
そして、遠くの方から声が聞こえてくる。
もう一度様子をよく見ようと少し身を乗り出して後ろを見る。
すると、大きな水色の猿が2人の人間と1つのハンバーグと何やら話している。
神父「アイマスク…漫才…サル時空…ミザル…?」
神父はできるだけ重要そうな単語を繰り返す。
そして、異変に気付く。
白い光の輪が凄まじい勢いでこちらに向かって来るではないか。
神父「こ、今度は何ですか!!?
   うわぁーーーーーー!!!!」
神父は白い光の輪に触れた途端、
視界が眩しく輝き、体が宙に浮いた。


神父が気がつくと、そこは不思議な空間だった。
神父「ここは…?」
紫色がかった霧が辺りを覆っている。
浮いている床の両脇を見下ろすと、濁った水が流れているようだ。
神父「またワープさせられましたね…。
   …あれ?そういえば、確かここは…」
と、神父は一人の少年に気付く。
そう、すいか帽だ。
神父「お、あなたは…
   神竜の祠にいたあの男の子ですよね。」
すいか帽は、思った通り辺りをキョロキョロ見回している。
神父「どうやらサル時空に引きずり込まれてしまったみたいですね。
   本で読んだことがあります。
   世界のどこかに「サル時空」を作り出せる猿がいる、と。
   この世界は単なる幻覚ではありません。
   発動者の力によって生み出された異次元の空間なのです。
   元の世界の「時間」の中に「空間」を作ってあるので外からは見えません。
   サル時空を抜け出すには、発動者…
   ミザルでしたっけ。彼を倒さなければいけないようですよ。」
すいか帽はここまで聞いてもピンとこない。
神父「え?すいかが食べたい?
   …そう言えば、すいかが食べたいんでしたね。
   ここにはすいかは無さそうですね。
   それに、早く脱出しなければ他の2人も危ないのではないでしょうか…。」
ふと横を見ると、少し遠くで数匹の猿がこちらを見て構えている。
サル「ウキーッ!!」
すいか帽は剣を抜き、そちらに向かって駆け出す。
そして、目にも止まらぬ速さで猿たちの間を走り抜ける。
猿達は少し遅れて傷や口から血を吹いて倒れる。
神父「…あなた強いんですね。
   よければ私もご一緒しましょう。」
2人はサル時空を進んでいった…。


その頃、うな。
うな「うーん…
   ここはどこなんだ?」
浮かぶ床。立ちこめる紫の霧。そして下を流れる水。
奇妙な光景を前にして余計混乱する。
うな「う〜ん…ここを抜ける方法は…
   確か、サル時空とか言ってたよな。」
だが、ここがサル時空だと分かったところで脱出法は出て来はしない。
と、すぐ近くの方で甲高い声がした。
??「ミザル様!!ミザル様!!
   私は関係ないですよ!!ここから出して下さい!!」
そう、先程の猿だった。
今、命乞いの真っ最中だった。
うなは近付いて声をかけてみる。
うな「…お前何やってるんだ?」
さる「お前らのせいだウキーッ!
   お前らのせいで私までサル時空に飛ばされたんだウキーッ!
   ゆ、許さないウキーッ!!」
うな「おっと、俺とやり合う気か?」
さる「ウキーッ!!」
うな「仕方ねぇ…」
猿が爪を向けてこちらに走ってくる。
うなはそれを難無くかわして、後ろから軽く蹴りを入れる。
さる「ウキイィィィーーーーッ!!!」
猿は勢いあまってそのまま床のないところに落ちていった…
遙か下の方で水しぶきの飛ぶ音が聞こえた。
さる「覚えてろウキーッ!!……」
流れゆく猿を少しだけ眺めた後、うなはサル時空をあても無く歩き始めた。


その頃、かるび。
かるび「さる…さるはどこですか…?」
よだれを垂らしたままガバッと起き上がる。
気が付いてみれば、何処とも知れない空間に自分一人。
さすがのかるびと言えどこれでは少なからず不安になる。
かるび「すいか帽さん…」
と、霧の向こうの方で何かが黄色く光る。
そちらの方向に目を凝らしてみると、それは猿だった…
しかも、こちらを向いて構えている。
今にも飛びかかってきそうな…
かるび「…さる?
    …じゅるる…」
かるびの表情が一変した。
不安そうな顔からいきなり悪魔のような顔になる。
これには猿達もぶったまげた。
我先にと細い通路を逃げまどう。
だが、ハンターと化したかるびから逃げ切れる者はいない。
かるび「燃火符!!」
恐ろしいほどのスピードで猿達のすぐ後ろまで走って高く飛び上がり、
そこから強力な炎を浴びせれば、
猿達はこんがりと焼け、すぐにかるびの胃の中へと召されていく。
かるび「ふぅ…もっと食べたいです。」
だが、周りには猿どころか、霧と床以外に何もない。
自分の言葉を聞いてくれる人もいない。
かるび「はぁ…すいか帽さん…」
かるびは寂しさに耐えながらもサル時空を歩いていく。

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