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第37話 絶望の城

3人はようやく城の中に入った。
やはり右も左も猿だらけ。
3人の表情にも疲れが見えてきた。
城の曲がり角に来たとき、3人の目の前に現れたもの…。
それは自由の女神だった。
うな 「やべっ、また自由の女神があるぞ。」
かるび「食べられますか?」
毎回同じ質問だとさすがに耳に入らない。
うな 「…なぁなぁ、驚かなかったら襲って来るんだったよな。
    もしここで驚いておけば襲ってこないんじゃないか?」
2人とも、うなの意見には賛成だった。
うな 「よし。
    こ…ここは地球だったのか!
    …我ながらバカみたいだな。」
うなが叫ぶと、それまでこちらを監視していた銅像の動きはぴたりと止まった。
うな 「じゃあ進むか。」
3人は猿の群を極力避けながら進んでいく。

広間らしき場所まで来た。
3人が様子を伺っていると、奥の部屋から眩しい光が射し込む。
見ると、洋服やアクセサリーを身につけた猿がこちらに歩いてきた。
その光は、宝石が部屋の灯りを反射したものだった。
キカザル「オーホッホッ! アタシの名はキカザル。おさる3幹部の一人ザマス。
     どう?アタシの今日のファッションは?華麗に着飾っているザマしょ?
     ところでアンタ達誰ザマス?こんなところで何やってるザマス?」
かるび 「さるを食べに来ました。」
あまりにも単刀直入に答えてしまうかるび。
思わず口が開いてしまう。
だが、その反応は予想外のものだった。
キカザル「ああ!日焼け止め塗るのを忘れたザマス!日焼けしたらシミができるザマス!
     それで、アンタ達何者?ここに何しに来たザマスか?」
そう、全く聞いていないのだ。
かるび 「さるを食べに来ました。」
キカザル「ああ!部屋の電気消すの忘れたザマス!節電を心がけているのに!
     ところで、アンタ達ここで何してるザマス!?」
かるび 「さるを食べに来ました。」
キカザルは話も聞かないでかるび達を問い詰める。
うな  「なんか会話がかみ合ってないぞ。みんな、相手の話をちゃんと聞こうぜ。」
キカザル「さるの話を聞かないアンタ達は排除するザマス!」
そう言うとキカザルは間合いを取って構えた。
うな  「お前が話を聞け!!」

 「燃火符!!」
キカザルとかるびはほぼ同時に札を構え、炎を繰り出す。
キカザル「キイィィィ!!そんなことしたら奇麗に着飾った服が台無しザマス!!
     許さないザマス!!」
うな  「くらえ、毒牙!!」
うなは毒牙を手にキカザルを切りつける。
キカザル「ぎゃぁ!!
     こ、これは何ザマス!?」
うな  「毒牙だって言ってんだろ!!」
キカザル「うるさいザマス!!解毒!」
キカザルは体から毒を抜き、再び構える。
キカザル「灼熱フレア!!」
かるび 「纏水!!」
かるびはキカザルのすぐ前に水の壁を出現させる。
だが、その水はその壁の向こうでキカザルにかかったようだ。
キカザル「ぎゃああぁぁ!!!
     服が!!台無しザマス!!」
キカザルは派手なその服がびしょ濡れになり慌てふためく。
だが、その隙にすいか帽はすぐ近くまで来た。
すいか帽は勢い良く剣を振る。
キカザル「ぎゃあぁぁぁぁ!!」
キカザルは少しだが血を流して倒れ、そのままふっと消えてしまった。

うな  「…ふう。」
かるび 「消えてしまいました…もう食べられません…」
うな  「そんな心配はしなくていいから。」
ふと奥を見ると、上に伸びる階段が見えた。
うな  「もしかして、あの階段の先にさる魔王が…?」
かるび 「さる…さる…じゅるる…」
うな  「お、おい!かるび!!」
かるびは殆ど正気を失ったまま階段を上り出す。
2人は彼女を追いかけるように階段を上っていった。


3人は上の階までついたのだが、そこには猿はいないようだ。
奥の扉からは何となくただならぬ気配が感じられる。
うな  「…この先にさる魔王が…ゴクリ。」
うなが唾を飲み込むのと同時に、かるびも同じ事をする。
…明らかにうなとは違う理由だ。
そしてかるびは扉の前に早足で歩み寄る。
うな  「おい!!ちょっと待て!!」
かるび 「さぁ、ディナータイムです!!!」
かるびは無責任にもその大きな扉を勢い良く開け放す。
後ろの2人は気が確かではいられない。
今までに見た猿とは比べものにならないほどの大きさの猿が大きな鎖で繋がれていたのだ。
??  「よぉ、クソ人間ども。よく来たな。」
うな  「お…お前が…さる魔王?」
うなは開きっぱなしの口を何とか動かして聞く。
??  「その通りだ。
     一体何の用でここに来たんだ?
     何?すいかが食べたい?」
かるび 「私はさるを食べに来ました。」
さる魔王「人間って下らない生き物だよな。
     俺が始末してやろう。」
すいか帽「……」
3人は構えたまま動かない。
さる魔王「どうした?来ないならこちらから行くぞ?」
うな  「でもお前、その鎖があっちゃ動けないだろ。」
さる魔王「そうだな。
     この忌まわしい鎖さえなければ、
     貴様らをここにおびき寄せる必要など無かった…」
うな  「おびき寄せる?」
さる魔王「そうだ。
     あのモコとかいう有名なパン職人を捕まえただけで、
     そいつを助けようとする人間が集まり、次々と奴隷が増えていく…。
     これほど愉快なことは無いな。
     お前達にも奴隷になってもらおうか…」
うな  「そうはさせない!!
     頼んだ、すいか帽!!」
うなが叫んですぐ、すいか帽は剣を構えながら走る。
さる魔王「そうだ、来るがいい!」
そして、さる魔王の体に斬撃を浴びせる。
…が、さる魔王の体には傷一つつかなかった。
すいか帽「っ!?」
すぐにさる魔王の巨大な爪で払い飛ばされてしまう。
さる魔王「俺様は無敵なんだよ!! 縛り糸!!」
さる魔王はその手からネバネバの糸を繰り出し、すいか帽の足に絡ませる。
すいか帽の足はそのまま地面に固定されてしまった。
さる魔王「さぁ、この俺を倒してみろよ?
     俺は鎖で繋がれてるから逃げはしないぜ?」
うな  「なんてこった…」
さる魔王はその場で高笑いする。
3人は何もすることが出来なかった。
さる魔王「来ないならこっちから行くぞ。メテオ!!」
さる魔王が両手を掲げると、隕石がこちらに向かってくる。
そして、3人は爆発に巻き込まれ、吹き飛ばされて倒れてしまった…。
さる魔王「クソ人間ども、俺を倒そうなんて150万年早いんだよ!!」
薄れゆく意識の中、さる魔王が高笑いしているのが辛うじて確認できたが、
すぐに3人の意識は途絶えてしまった…。
広大な城に、さる魔王の笑い声がいつまでも響いていた…

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