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第38話 救出作戦

すいか帽が目を開けると、既に数匹の猿に担がれてどこかへ運ばれている最中だった。
キカザル「オーホッホッ!
     目を覚ましたザマスね?
     人間の分際でさる魔王様に戦いを挑むなんて150万年早いザマス。
     アンタ達は一生、さる魔王様の奴隷として生きていくザマス。」
キカザルは横について歩き、こちらを向かないまま高笑いしている。
そして、猿達は乱暴にすいか帽を牢屋に放り投げた。
すいか帽が立ち上がる前に牢屋の扉は勢い良く閉ざされ、堅い錠までつけられる。
見れば、その牢にはかるびともう一人、白い服を着た男がいた。
モコ  「これはまた、ひどくやられたようだな。
     …だが、さる魔王に戦いを挑んで生きているなんて奇跡に近いぞ。
     ワシの名はモコ。
     この牢で奴隷としてパンを作らされてるんだ。」
かるび 「パンをください。」
牢の隅で壁にもたれて座っていたかるびが力の抜けた声で喋る。
モコ  「…作ったパンは全てさる魔王に献上しなければならないんだ。
     残念だが、お前にはやれないんだ。」
と、牢屋の扉が開いて1つの大きなハンバーグが投げ込まれる。
キカザル「オーホッホッ!これで全員ザマスね。
     しっかり働くザマスよ!」
キカザルは宝石をキラキラさせながら遠くへ歩いていった。
うな  「あいたたたた。
     ひでー目にあったな。
     でも、全員無事だっただけよかったかもな。」
と、うなはモコの異変に気付いて青ざめる。
モコ  「なんと素晴らしいハンバーグなんだ!
     このハンバーグとワシのパンがあれば究極のハンバーガーが出来るに違いない!
     なぁ、このハンバーグをワシにくれないか?
     え?すいかが食べたい?
     なんの話をしてるんだ?」
モコの目は輝きを増し続ける。これは本気だ。
と、かるびの目まで共鳴し輝きだした。
かるび 「是非作ってください!
     究極のハンバーガーを!」
うな  「いや、そこは断れよ!
     なんで俺がハンバーガーになんなきゃなんないんだよ!」
もう彼女に先程までの脱力感は無い。
今回もうなに抵抗の術はなかった。
モコ  「よし! 腕によりをかけて、美味しいハンバーガーを作るぞ!」


そして数時間が経ち、モコがオーブンを開ける。
そしてその中のパンでうなを挟む。
モコ  「出来たぞ!これが世界一のハンバーガーだ!」
かるびとモコの2人の目は恐ろしいほどに輝いている。
うな  「なんてこったい…」
だがその時、牢屋の扉が勢い良く開け放された。
4人とも、あまりに突然の出来事に少し飛び上がる。
キカザル「新しいパンが焼けたザマスね?
     さる魔王様に献上するザマス。」
キカザルは猿達にそのハンバーガーを運ばせる。
うな  「やめろ!!何をするんだ!!放せ!!」
先程までの出来事で脱力していたのか、うなはあっさりと連れて行かれてしまった。
3人はただ呆然とするしかなかった。
モコ  「…しまった!!
     ワシが作ったパンは全てさる魔王に献上することになっていたんだ!
     すまない…、ワシのせいで、お前達の大切な仲間を…」
かるび 「大丈夫です。
     新しいパンを焼きましょう。」
モコ  「いや、そこは仲間の心配しとけよ!」
モコは壁にかかった古びた時計を見る。
モコ  「よし、まだ夕飯まで時間がある!
     ひょっとすると、まだ間に合うかもしれん!」
するとモコはタンスを動かし、そこの床の板を外す。
なんとそこには階段が隠されていた。
モコ  「この階段の先は食料庫に繋がっておる。
     ハンバーガーも夕飯まで保管されているかもしれん。
     ハンバーガーを救うんだ!」
かるび 「はい!!
     美味しいハンバーガーを食べに行きます!!」
モコ  「いや、仲間だろ!!早く行くんだ!!」
かるびはすいか帽に続いて階段を降りていった。


 「……」
長く曲がりくねった廊下は、猿のいた形跡がいくつかあるばかりだ。
さすがのかるびも言葉が見つからないらしく、暫くの間沈黙が続いた。
だが、十字路を横切ろうとしたとき…
すいか帽「!!」
すいか帽はとっさに剣を抜いて構える。
かるびが右の通路の方を向くと、そこにいたのは…
さる玉 「ウキーッ!!」
猿の頭のようなものが浮かんでいる。
さる玉と呼ばれるものだ。
そして、こちらを向いて叫んでいる。
だが、かるびはすぐには構えなかった…。
そうしている内にさる玉は口を開ける。
すると、さる玉の口の前に白い光が集まり小さな球となる。
そしてさる玉はその光の球をこちらに放ってきた。
さる玉 「ウキーッ!!」
かるび 「っ…!」
突然の事にかるびは思わず目をつぶって腕で防ごうとしてしまう。
だがその時、すいか帽が素早くかるびの前に出て光の球を剣で弾く。
かるび 「!! すいか帽さん!」
さる玉 「ウキーッ!!」
かるびの前で彼女を守る形になったすいか帽に、さる玉はお構いなしに突進してくる。
迫るさる玉に向かい、素早く剣を振るすいか帽。
すいか帽の振った剣がさる玉に当たった途端、
さる玉は乾いた爆発音と共に破裂して跡形もなく消え去った。
少し経って、微量の粉のようなものが舞い降りた他には何も残らなかった。

かるび 「あ…ありがとう…」
かるびが少しうつむいて言うと、彼は笑顔で返してくれた。
そして、2人はさらに奥へと歩いていった…。

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