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第41話 新たな力

3人は城から出るべく地下水路の側を通っていた。
やはり猿で溢れている。
暫く歩いていると、やっと扉が見えてきた。
かるび 「次はどんなさるがいるんでしょうか?」
うな  「どうせまた同じだろ。
     …まてよ、それなら…」
彼の頭には良策が思い浮かぶ。
笑みを浮かべながら扉から少し離れる。
そして、助走をつけて勢い良く扉に突進して叩き開けた。
思い通りの感触がうなの体を包み込む。
??  「ギャァーーーー!!!」
案の定、その扉の前にはミザルが待ち構えていたようだ。
うなの渾身の体当たりで向こう側の壁まで吹っ飛んで倒れている。
それだけではない。今回はイワザルとキカザルもいる。
ミザル 「だっ、誰ですかぶつかってくるのは!!」
うな  「フン、いつもぶつかってくるからお返しだ。」
キカザル「アンタ達毎度毎度しつこいザマス!!
     今日こそ完璧に叩き潰してやるザマス!!」
ミザル 「よくもしてくれましたね…
     私達はもう今までとは違うんですよ。
     さる魔王様から生き返しの秘術を頂きましたからね。
     それはもう、びっくりですよ。」
キカザル「おさる3幹部に刃向かった事を後悔するザマス!!」
イワザル「……………」
うな  「なら、二度と復活できないように完璧に叩き潰してやるぜ!!」

3人と3匹は構えて戦闘態勢に入る。
ミザル 「行きますよ、乱4撃!!」
ミザルは見事にうなとかるびの間に割り込み、両手を勢いよく振り回す。
うな  「お前は引っ込んでろ!!」
ミザル 「ふんぎゃ!!」
横腹に蹴りを入れられたミザルは再び向こう側まで吹き飛ばされる。
キカザル「炎の息!!」
もめている内にすいか帽に向かって炎が迫り来る。
うな  「!! よけろ!すいか帽!」
言われる前にすいか帽は横に飛んで避ける。
が、避けた方向には例の大岩が待ち構えていた。
イワザル「……………」
イワザルは腕を引き、すいか帽に向かってパンチを繰り出す。
すいか帽は真上にジャンプし、縦に一回転しながらイワザルに斬撃を浴びせる。
その固いボディにはほとんど傷は入らなかったが怯ませるのには十分の衝撃だった。
すいか帽「2連撃!」
すいか帽は着地してすぐイワザルに次々と斬撃を与える。
イワザルの体はその2回の斬撃でようやく真っ二つになる。
そしてそのままその体は薄れて行ったのだが…
ミザル 「蘇生!!」
ミザルが両手を向かい合わせると、白い光の輪がいくつも合わさり球体を形成する。
その光は手から放れてイワザルに届き、
その薄れて行っていた体は元の形に戻り、色を取り戻していく。
イワザル「……………」
うな  「復活したのか?」
ミザル 「言いましたよね?さる魔王様に"生き返しの秘術"を頂いたと。」
かるび 「何度でも食べられますね」
うな  「食べれるかっ!!
     こうなったら、全員まとめて倒すしかない!
     行くぞ2人とも!!」
すいか帽「…。」
3人は目を合わせて頷く。
うな  「炎の息!!」
かるび 「鎌鼬符!!」
炎で熱せられて熱風の斬撃となった鎌鼬が3匹の体を切り刻んでいく。
 「ぎゃぁぁぁああ!!!」
ミザルとキカザルの2匹はいとも簡単に切り刻まれてその場に倒れ込む。
だが、例のイワザルにはほとんど傷が付いていない。
イワザル「……………」
イワザルはミザルと同じように両手を向かい合わせた。
そして、その両手に白い光が集まり始めたが、イワザルは目の前に落ちた影に気付く。
見上げてみれば、すいか帽が剣を掲げたまま天井近くまで飛び上がっていた。
すいか帽「高揚斬!!」
そのまま勢い良く急降下し剣を振り下ろし、イワザルに強烈な一撃を浴びせる。
その剣はあの固いイワザルの体を通り抜け、石造りの床まで叩き斬る。
イワザルは真っ二つとは行かないまでも、かなり深い斬撃を入れられた。

 「……」
すいか帽は背中を向けぬまま2人の元に戻ったが、暫く沈黙が続く。
と、ミザルとキカザルが起き上がる。
体のあちこちから血を流している。
うな  「…まだ来るか?」
ミザル 「…よくも…やってくれましたね…」
その時、突然3匹の体の表面が激しく波打ち始める。
ミザル 「か、体が崩壊しそうです!!」
キカザル「さる魔王様に頂いた大切な体が溶けるザマス!!
     早くさる魔王様の所へ戻るザマス!!新しい体を貰うザマス!!」
イワザル「……………」
そういっている間にも波打ちは激しくなる一方だった。
3匹は陸に上がった魚のようにのたうち回りながら奥の通路へと消えていく。
3人はただその様子を見守るだけだった。
かるび 「猿が去る。」


3人は長い廊下の先に上り階段を見つけた。
かるび 「階段があります。」
うな  「やっとこの城から出られるのか…。」
うなはバナナ達を助けられなかったのが心残りだったが、
この猿のにおいの立ちこめる城を一刻も早く出たい気持ちは2人と変わらなかった。
3人は階段の上の床板を外して地上へと飛び出す。
だが、そこは地上ではなかった。
なんと、あのさる魔王の目の前に出てしまったのだ…。
かるび 「え……?」
さる魔王「よぉクソ人間ども、また来たな。
     今度はマジで殺すぞ。」
うな  「な…出口じゃなかったのか…?」
さる魔王「俺の可愛い部下共を痛め付けてくれたようだな。
     俺が借りを返させて貰うぞ。」
かるび 「…! 左手が…」
さる魔王「お、気付いたか。」
さる魔王の左手をよく見ると、それはもはや直視できない物になっていた。
先程のおさる3幹部の3匹の顔が、内側から飛び出しているかのように溶け込んでいたのだ。
??  「う…うう…」
さる魔王「こいつらはもう俺の体の一部だ。
     名付けて…"サルマゲドン"だ。
     お前らに復讐したがっていたからな。
     俺がこれを使って代わりに遊んでやるのさ。
     くらえ!炎の息!!」
さる魔王が左手をこちらに向けると、
キカザルの顔であろう物の口から勢い良く炎が飛び出す。
かるび 「て、纏水!!」
かるびはそのさる魔王の左手に怖じ気付き、
ほとんど目を瞑ったまま目の前に水の壁を出現させる。
さる魔王「石つぶて!!」
その叫び声と共に、水の壁から無数の石が飛び出して来た。
だが、間一髪ですいか帽が全て剣で弾く。
水の壁が引き、うなはさる魔王に向かってジャンプする。
うな  「今度はこっちの番だ!!毒牙!!」
さる魔王「毒牙!!」
うなが右手に掴んだ毒牙を叩き込むより早く、
さる魔王の左手のミザルの顔のような物が奇声を上げて口を開ける。
両者の毒牙はぶつかり合うが、うなが弾き返される形となってしまった。
うな  「うわぁっ!!」
うなは地面に叩き付けられ、その勢いに乗って長い距離を地面に滑り込んだ。
うなはなんとか起き上がるが、すぐに膝をついてしまう。
さる魔王「さて…そろそろ終わりにさせて貰おうか…」
そう言うと、今度は元のままの右手をこちらに向けてくる。
さる魔王「おさるインパクト!!!」
叫び声が辺りに響き渡ると、さる魔王の右手を囲むようにさる玉が出現する。
その数はかなりのものだ。
そして、さる魔王が元のままの右手を前に突き出すと、
無数のさる玉の群れがこちらに突進してくる。
かるび 「きゃぁーーーー!!!」
さる玉の群はすいか帽達を突き飛ばすように次々と突進していく。
そして3人とも壁に叩き付けられて、そのまま力無く床に倒れ込む。
うな  「くそ…強すぎ…る…」
さる魔王「俺は無敵だ!!俺を倒すのは150万年早いんだよ!!」
かるび 「さるが…食べられないなんて…
     …すいか帽さん…」
3人とも意識はあったものの、立ち上がる力は残っていない。
もはや倒されるのは時間の問題と思われた。
と、すいか帽の脳裏にある事が浮かぶ。

前にも同じような事があった…。
あれは…そう、闇の王との戦い。
あの時、彼が来なければ助からなかった…。

    (??? 「待たせたね、西瓜太郎クン。」)

そして今、すいか帽は残る力を振り絞って叫ぶ。
 「すいか様!!!」

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