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   夏の夜


これは ある夏の夜 本当に
私が作った話です




昔 昔のことでした
山奥の 一軒の家で起きた 小さな事件

しとしと しとしと と
雨の降る夜でした
動物たちは眠りにつき
山の草木は静かに歌い
月の明かりが ぼう と 夜闇を照らしていました

そこの家で寝ていた爺さんは
何かの物音で 目を覚ましました
ぐおおおん ぐおおおん ぐおおおん
その音を不思議に思った爺さんは 外へ 行きました

手に行灯を持ち 外の畑へと 歩いていきました
爺さんの 行灯を持つ手は ぶるぶる と 震えていました
そして 前へ進むと その音は 次第に 大きくなり
爺さんの手の震えも 次第に大きくなり
夜の月明かりは ぼう と 夜闇を一層明るく 照らしました

爺さんが 畑の 真ん中まで来ると
その音は 一旦止み そして
再び ぐおおおん ぐおおおん と唸り
地面から 這い出てくるように
1つの






カブの芽が出てきました




爺さんは 恐怖のあまり 腰を抜かしてしまいました
そして 行灯を放り出して 家に駆け出しました

そして 爺さんは 婆さんを呼び 畑に出ました
爺さんと婆さんは そのカブを見て 驚きました
ぐおおおん ぐおおおん と 唸りながら
ぐんぐん成長していったのです
そして そのカブは 大きく 立派なカブになりました

爺さんと婆さんは そのカブを 家に持ち帰ろうと 引っ張りましたが
ぎぎぎ ぎぎぎ と 音がするだけで ぴくりとも動きません
爺さんは 二人では無理だと思い 家に戻りました
婆さんは まだ カブを持ち帰ろうと必死でした

爺さんは家に戻り 部屋の隅に目をやりました
すると ぎらぎら と 赤い 二つの目が
こちらを向いていました

血のように赤く 火のように輝く その目は
まるで 地獄へ誘うかのように
爺さんを じーっ と 見つめていました
爺さんは 背中に汗をかきながら 恐る恐る
その 赤い目に 行灯を近づけました

そこにいたのは
赤い目の 大きい 毛むくじゃらの






かわいい ウサギでした




爺さんは そのウサギの目に 吸い寄せられるように
その場に 立ち尽くしていました
手に持った行灯は がたがた と 震えていました
恐る恐る そのウサギに近づき
そっ と 手を触れてみました
するとウサギは きっ きっ と 声を上げ
擦り寄ってきました

爺さんは ウサギを抱き上げ 外に出ました
まるで 羽のように軽く
行灯の光に照らされ 透き通っているようでした
そして そのウサギを 婆さんに見せると
婆さんは 驚いてしまいました

婆さんの話を聞き
爺さんも 驚いてしまいました

なんと そのウサギは
半月前に死んでしまったという
隣の百姓が飼っていたウサギの






兄弟だったのです





そして夜は明け
爺さんと婆さんは
幸せに暮らしましたとさ


The END

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