戻るっ 前へ

第16話 廃墟の記憶

3人は廃墟を探索していたのだが、まるで某迷路集。
瓦礫が邪魔する通路が無数にある。
古びた屋敷や灯台などは特に3人の苦手分野だ。
3人にとっては縦の構造は記憶しづらい。
そもそも3人の中のあの2人は、自宅のトイレを覚えるのがやっと。
案内人も案内板も無いこの廃墟を探索するなど本当に無謀だ。
何度も何度も全く同じ景色が飛び込んでくる。
日が沈んでしまうのも時間の問題だ。
うな 「…もう諦めるか?」
だが、3人の想いはこんな事では曲がらない。
うな 「すいかが食べたい?
    …そうだよな、すいかだよな。」
うなはそんなすいか帽に少し勇気づけられた。

と、少し遠くへ行っていたかるびが大声を上げた。
かるび「うなさん!!」
うな 「何だ!?何か見つかったのか!?」
かるびが指さしているのは古びた「焼肉屋」の看板である。
うな 「…さっき見たよ!!!」
先程見たばかりの看板である。
うなは呆れて座り込んでしまった。
かるび「違います。ちょっと待って下さい」
かるびはそう言うと、跪いて看板を横にずらす。
すると、そこに地下への入口があった。
うな 「おぉ!この下はなんかありそうだ!!」
うなは何の根拠もない自分のセリフに好奇心をかき立てられる。
今までの建物に地下は無かったのだ。
うな 「じゃあ早速突入だ!」
3人は地下へ入っていった…

だが、入らなかった方がいいのかもしれない。
これこそ完全な迷路だ。
もっとも、この3人にとってはの話。
ほとんど1本道なのだが、道が2つになったとたんすぐに迷う。
何度もあの看板の下に来てしまう。
うな 「ダメだ…ラチがあかない…」
3人とも体力的に限界かもしれない。
すいか帽は壁にもたれかかった。
すると、壁が回転してすいか帽は壁の向こう側に落ちてしまった!
だが、どんな構造になっているのか、落ちても落ちても落ちきらない。
すいか帽は混乱と恐怖で意識を失ってしまった…


老人「おぉ、気がついたか。」
すいか帽が気付くと、数人の人に囲まれて倒れていた。
老人「お前さん、あの魔物に立ち向かったんじゃな?」
すいか帽は身に覚えのない質問にまた混乱する。
兵士「すいかが食べたい?
   お前、やっぱりあの魔物に!?」
あの魔物、と言われても、すいか帽にはすいかしか頭にない。
と、そこにすいか帽と同じくらいの歳であろう一人の少年が現れた。
少年「町長!!やっぱり俺はヤツに挑む!」
老人「なんじゃと!お前は何を考えとるんじゃ!!」
少年「なんでだよ!ヤツを倒してまたすいかを作ろうぜ!!」
老人「あいつは「かぎ魔王」の兄なんじゃぞ!
   世界7魔王の1人であるかぎ魔王の恨みを買ったら、
   それこそこの町は終わりなんじゃ!!」
すいか帽は話の筋はつかめなかったが、「すいか」という言葉に過剰に反応した。
少年「え?すいかが食べたい?」
少年は目を輝かせて聞き返す。
少年「ちょっと来いよ」
すいか帽は少年の横まで来る。
少年「と、言うわけで俺はこいつと一緒にヤツを倒してくる。」
老人「ま、待て、待つんじゃ!!」
少年はすいか帽の腕を掴んで走り去った…


少年はすいか帽を自分の家に入れた。
少年「俺の名はタヒチ。
   ここら辺では有名な西瓜職人だ。
   この両肩のすいかワッペンを見ろよ。
   これはな、1ヶ月前にすいか名人大賞を受賞したときに貰ったんだ。
   俺にすいかを作らせたら右に出る者はいない。
   この町は、言うまでもなく世界に誇るすいかの名産地だ。
   その中で一番なんだから、どれだけ凄いか分かるだろう?
   それに顔も悪くないし、ここら辺の女の子達もみんな俺に夢中なんだぜぇ?
   俺の言ってること分かるよな?」
少年は強引に話を進めている。
すいか帽は、すいかの話なら集中して聞ける。
一言か二言余計な部分もあったが。
タヒチ「ところが、だ。
    この町にあの化け物が来てからというもの、
    この町の奴らはすいか畑を潰すとか言い出したんだ。
    畑を潰せば魔物は来ないって言うんだ。
    しかも、テーマパークを作って儲けようなんて言うんだ。
    でも、俺はそんなことじゃ納得できない。
    みんな西瓜職人の誇りを忘れちまってる。
    お前、すいかが食べたいんだろ?
    なら、魔物を倒すのを手伝ってくれないか?」
すいか帽は、すいかのためならと思って何度も頷いた。
タヒチ「そう来なくっちゃな。
    ヤツは鍵の力を使うんだ。
    だけど心配するな。
    俺はその鍵の力に対抗する魔法を見つけてきたんだ。
    じゃあ早速出発だな!」
同じ物を求める者は共に戦う。
2人はすいか畑へ走っていった。

戻るっ 次へ