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第25話 最終決戦

今までに集めた6つの竜の玉はすいか帽の荷袋で紅く光っている。
その光はいつも消えることはなかった。
7つ目の竜の玉を手にすればこの輝きはもう見れないかもしれない。
だが、3人は望みが叶うならそれすら気にならないだろう。
そして今、7つ目の竜の玉の本当の在処へと来た。
うな 「いよいよ最後だぞ。」
かるび「その次はデザートも待ってます」
うな 「それってとんでもないことに思えるんだけどなぁ…」
かるび「焼き肉の食材が揃うときが来ました!!」
かるびはそう叫び、扉を蹴り飛ばす。
…蹴り飛ばす?

うな 「…誰もいないぞ?」
かるび「暗くて…臭いです…」
うな 「うおっ、確かに…何だこの部屋は?」
先程までの部屋とはまるで違う、闇に包まれた部屋である。
それに、ただならぬ気配もする。
そして、どこからか声が聞こえる。
???「待ちわびたぞ、竜の玉を求めし戦士達よ…」
うな 「誰だ!!どこにいるんだ!!」
???「我が名は闇の王…世界の闇を統べる王…」
うな 「あれ?それってどこかで聞いたことあるような気が…」
闇の王「かげ魔王のことだろう?
    もう彼の気配はしない。
    ならば私がそれを名乗るのも悪くはないはずだ。」
かるび「私は焼き肉が食べたいです。」
闇の王「それが竜の玉を求める理由か?
    …すいかが食べたい?
    何度も同じ事を聞かせるな。
    そんな下らない望み一つで私と戦おうと言うのか?」
うな 「で、どこにいるんだ?お前」
怒りをぶつけるべき相手が見えないので余計に腹が立つ。
闇の王「お前達の目の前だ。
    いや、上と言った方が正しいだろう」
うな 「上…?」
3人は言われるままに上を見る。
すると、目の前のそれは闇ではないことが分かった。
どす黒い巨大な怪虫だ。
長い胴体の先にある巨大な口。
牙が口から飛び出ている。
目が無数にあり、それぞれが血の色に輝く。
体の表面はドロドロに腐敗して爛れている。
再びその怪虫の足下を見てみる。
すると、先程までの先入観が嘘のようだ。
先に鋭い爪のついた4本の足が軋んでいる。
…グロテスクという言葉を使う時が来たようだ。
闇の王「驚いたか?」
うな 「お、驚きなんか…」
闇の王「私を倒さなければ竜の玉は手に入らない。
    だが、私は不死身の体を持つ。
    この矛盾が、私を闇の王へと導いたのだ。」
かるび「焼き肉が…あぁ…」
3人ともあまりの恐怖に後ずさりを始める。
だが、すぐ後ろの扉は既に閉まっていた。
すぐに背中が着き、絶望感が増す。
闇の王「さぁ、お前達が夢を見るのも終わりだ…」

うな  「…やるしかない! 炎の息!!」
かるび 「燃火符!!」
炎が闇の王の体を焦がす。
だが、見る見るうちにその傷は黒い光に包まれ、治っていく。
うな  「な…治った…?」
闇の王 「私の体は不死身だ。どんなに傷をつけようが無駄だ。」
うな  「一撃で片を付ければいいんだな?
     行け!すいか帽!!」
すいか帽「氷斬破!」
すいか帽の剣が反射する光が、闇の王の横を飛び越える。
そして、闇の王は斜めに真っ二つに切り裂かれた。
だが、切り口の間が黒い光に包まれ、元通りになっていく。
その境目の色がやや明るくなっている。
かるび 「鎌鼬符!!」
風の斬撃は闇の王の体を覆うように向かっていく。
しかし、闇の王が黒い光を発すると、その斬撃すらも全て消えていった…

闇の王 「次はこちらから行くぞ…」
闇の王の口が不気味に動く。上下の牙が軋み合っている。
闇の王 「アルティマ!!」
その口から吐き出すように青い輪を放つ。
うな  「危ない、避けろ!!」
3人は間一髪で逃れることができた。
闇の王 「グラビーガ!」
またも吐き出すように巨大な黒い光の球体を放つ。
3人は避けようとするが、その大きさにはお手上げだった。
3人とも壁に叩き付けられ、そこからさらに吹き飛び、うつぶせに倒れ込む。
闇の王 「もう終わりか?
     以前ここに来た者共はもう少しマシだったぞ?」
3人はうつぶせの状態で、腕を立てるのがやっとだ。
だがすいか帽は力を込めて立ち上がる。
闇の王 「まだ戦うのか?
     お前はすいかが食べたいだけなのだろう?
     そのために命を落とすようなまねをする必要はないのだぞ。」
すいか帽は無言で足元の剣を拾い上げる。
闇の王 「私を怒らせない内に…
     …何だ?」

ここは地下の建物のはずだ。
だが、上から空気を切り裂くような音が近付いてきた。
まるで何かが飛んでくるような…
初めは耳を澄ましてやっと聞こえる程度だったその音は、
次第に近付いて来て、耳を塞がないと耐えられないほどの轟音となった。
そして、天井が眩く光ったと思うと、天井に夜空が見えるほどの穴が開いた。
砂煙が舞い上がり、その中には…

??? 「待たせたね、西瓜太郎クン。」
少し暗いが、その姿ははっきりと確認できる。
…全身が薄い緑色だ。
すいか帽より少し背が低い。
顔には西瓜のような黒い縞模様がある。
??? 「全く、そこまですいかを食べたがるのも困りものだよね。
     こんな過去まで来ちゃって…、探すのに苦労したよ。」
うな  「誰だ…?」
??? 「僕のことはすいか様とでも呼んでくれよ。
     西瓜太郎クンとゴッチャになるからね。」
うな  「…どういう意味だ?
     西瓜太郎って…?」
すいか帽「すいか…様…」
その時、すいか帽の脳内で様々な記憶が、まるで万華鏡を見るかのように一度に蘇った。
その記憶は、すいか帽自身も驚かされるものだった。
そう、すいか様と名乗る彼とすいか帽の記憶だ…

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