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第33話 沈黙の大岩

3人は城の方から聞こえるけたたましい足音を聞いていた。
あの猿が巻き上げた砂煙はまだ落ちない。
うな  「あのさる、どこまで行くんだ?」
かるび 「さるを連れてきてくれるんですね。じゅるる…」
うな  「お前の考えてるような理由じゃないだろ。」
そして、そんなに待たない内に猿がこちらに走ってくる。
彼の後ろからは、大きな猿がのしのしと歩いてくる。
その体は、猿とは思えないように冷たく輝いている。
??  「……………」
かるび 「さるを食べに来ました。」
うな  「いや、俺は食べないけどな。」
??  「……………」
2人が話しかけるがその猿は全く口を開こうとしない。
うな  「なんか喋れよ。」
ここで、案内の猿が歩み出て話し始める。
さる  「このお方は、おさる3幹部の一人、イワザル様だウキーッ!
     「言わざる」だから、何も喋らないのだウキーッ!」
うな  「…は?」
イワザル「……………」
さる  「イワザル様!こいつらを倒して下さいウキーッ!!」

イワザル「……………」
相変わらず無言で無表情。戦う前から気が滅入る。
イワザル「……………」
イワザルはゆっくりと両手をこちらに向ける。
すると、その両手から無数の石が飛んでくる。
さる  「出た!!イワザル様の技「石つぶて」!!
     全て直撃しようものなら、あなた達はもうあの世行きだウキーッ!!」
彼が説明している間も石は速度を増していく。
かるび 「そんなもの…鎌鼬符!!」
かるびが出した札から突風の斬撃が飛び出す。
無数の淡い緑の三日月が華麗に舞う。
飛んで来た石は全てその斬撃に弾かれて地面に落ちる。
イワザル「……………」
今度はイワザルは両手を構えずにうなを睨む。
うな  「な、何だ…?」
さる  「出た!!これがイワザル様の技「凝固の瞳」!!
     この視線に包まれたら、あなたはもう動けないウキーッ!!」
イワザル「……………」
イワザルの目を見ていると、吸い込まれるような気分になる。
うなの周りの空気が半透明になっていく。
体中が固くなり、動こうとしても体が固くて全く動けない。
うな  「本当だ…動け…な…い……」
かくして、ガチガチに固まったハンバーグが出来上がった。
さる  「さぁイワザル様!あと2人、固めてしまって下さい!!」
イワザル「……………」
イワザルは今度はすいか帽に冷たい視線を向ける。
すいか帽はさすがに怖くなって剣を構えて目を瞑る。
…だが、どうやら何事も無いようだ。
不思議に思いイワザルの方を見ると、イワザルの周りの空気が半透明になっている。
…そう、すいか帽の剣に反射して映ったイワザルの瞳によって、
イワザル自身が固まってしまったのだ。
さる  「…イワザル様?…イワザル様!!何やってるんですか!!」
イワザル「……………」
元々あまり動かないイワザルがさらに動かなくなった。
かるび 「…今です、すいか帽さん!」
すいか帽は頷き、剣を構えた。
すいか帽「氷斬破!!」
すいか帽の氷の斬撃がイワザルに直撃する。
そしてイワザルの体が少し浮いた後、その巨体が真っ二つになり、そのまま消滅した。
その直後、うなは動けるようになる。

さる 「な、なんてことだウキーッ!!イワザル様が負けるなんてウキーッ!!
    だいたいお前らずるいウキーッ!!
    イワザル様1人に3人がかりなんて卑怯だウキーッ!!
    1対1で戦うウキーッ!!」
うな 「ウキウキとうるさいウキーッ!!」
面白くなってうなもマネする。
顔まで猿のマネをしている。
さる 「お前らここで待ってるウキーッ!!」
案内の猿はまた砂煙を巻き上げ、城に向かって走り去る。
うな 「また誰か呼んでくるのか?
    そろそろ休ませて欲しいな。」
かるび「お腹も空きましたね。」
うな 「…確かにそうだけど、さるは遠慮する。」


そして、ほとんど待たない内にまた猿がやって来る。
今度の猿は水色だ。
そして、こちらに歩いてくる。
が、どんなに近付いても一向に止まろうとしない。
そして、そのまますいか帽と正面衝突した。
?? 「痛っ!! …ぶつかってごめんなさい。」
そして、案内だった猿がこちらに来る。
さる 「このお方はおさる3幹部の一人、ミザル様だウキーッ!!」
猿がそう言うと、ミザルは自己紹介を始める。
…案内の猿の方を向いて。
ミザル「初めまして、ミザルと申します。」
さる 「私に挨拶してどうするんですか!!敵は向こうです!!」
今度はミザルはあらぬ方向に数歩歩いてそちらの方向にまた喋る。
ミザル「私が成敗します!覚悟なさい!!」
さる 「ミザル様、どこへ行くんですか!!戻ってきて下さい!!」
そう言うと、ミザルはこちらに戻ってくる。
…案内の猿の方を向いて。
もちろんミザルはその猿に正面衝突する。
 「痛っ!!」
2匹は同時に叫ぶ。
ミザル「あなたが敵ですね!やっと見つけましたよ!!」
さる 「違います!!しっかりして下さい!」
3人は呆れ果てて開いた口が塞がらない。
うな 「お前らさっきから何やってんだ?新手の漫才か?」
さる 「ふっふっふ…聞いて驚くウキーッ!!
    ミザル様はアイマスクをしているから何も見えないのだ!!」
ミザル「敵がどこにいるのか、さっぱり分かりません。」
ミザルはキョロキョロと辺りを見回す。
これでは本当に新手の漫才だ。
うな 「おいおい、それで俺達と戦うつもりか?」
さる 「お前ら3人は確かに強いウキーッ!!
    しかし!1人1人は大して強くないはずだウキーッ!!
    お前らを1人ずつサル時空に引きずり込んで、1人ずつ始末してやるウキーッ!!
    というわけでミザル様!! 奴らをサル時空に引きずり込んで下さい!!」
ミザル「じゃあ行きますよ。」
ミザルは気合いを入れると両手から白い光の輪を放つ。
…案内の猿の方を向いて。
さる 「ギャーーーッ!!」
白い光に包まれた猿はあっという間に光と共に消え去った。
ミザル「…あれ?間違えました?」
うな 「バカだろお前。」
ミザル「仕方ないですね…。
    この周りのもの全てサル時空に引きずり込みましょう!」
うな 「…えぇ!?」
ミザルは両手を振り回し、あちこちに白い光の輪を乱れ打ちした!
うな 「何だよそれーー!!!」
もちろん3人ともその光でサル時空に引きずり込まれてしまった…。

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