戻るっ 前へ

第43話 別れと出会い

外の世界は4人にとって清々しいばかりだった。
透き通る青色の空、緑色の草木、優しい青色の海。
モコ 「久しぶりの日の光だ!気分いいなぁ。
    そういえば、息子のロコは今頃どうしてるんだろうな。」
うな 「ああ、あいつならあそこに…」
うなが何気なく指さした先の光景に、4人とも目を疑った。
大量の猿肉をガツガツと貪り食う白い猿。
白猿 「ウキーッ!!さる美味いなぁ。」
かるび「白いさるです。」
うな 「すいか様とかいうヤツが言ってたな…白いさる。
    でもなんでここに白猿がいるんだ?
    確かここって俺達がさる食べた場所だよな。」
モコ 「ま、まさかこの白いさるがロコなのか?」
3人は言葉を詰まらせる。
最後に見たときも、彼はずっとこの場所で猿を食べていた。
白猿 「ウキーッ!!さるをもっと食べたい!」
見る限り、この仮説を否定できる物は何一つ見当たらない。
かるび「あなたの息子はさるになりました。」
うな 「…そうかもしれないな…
    こえー。猿食べ過ぎると猿になるぜ。
    俺は1匹しか食べてないから多分大丈夫だけどな。」
かるび「私は57匹食べてしまいました。」
うな 「それにさる魔王も食べたよな…?
    やべーぞそれ。尻尾とか生えてきてるかもしれないぞ。」
2人は他人事のように話しているがモコはそうはいられなかった。
モコ 「そうか…、これも運命か。
    お前達、ありがとうな。これを受け取ってくれ。」
そう言うとモコはポケットから一つの勾玉を取り出した。
うな 「これは何だ?」
モコ 「これはな、昔英雄と称えられた剣豪が持っていたとされる勾玉だ。
  その英雄は、どんななまくらな剣からでも見事な剣の技を繰り出したと言われ、
  その剣の技で、生きている間ずっと彼の故郷を魔物から守り抜いたという伝説がある。
  剣の道を歩むものなら誰でも彼を目指したものだ。
   ワシも少し前まではこの勾玉をお守りに剣の修行をしたものだが…
   ワシはあまり剣の技に恵まれなかったみたいだからな。
   お前達に持っていって欲しいんだ。」
うなはそれを受け取るとすいか帽に押しつけるように差し出す。
うな 「剣の技のお守りなんだろ?
    だったらすいか帽が持ってろよ。
    お前の剣の技にはいつも助けられていたしな。」
すいか帽は、持っておいて損はないだろうと思いそれをポケットに入れた。
モコ 「…ワシもさるを食べて運命を受け入れることにするよ。」
モコは白猿と化したロコを少しの間見つめてから口を開いた。
うな 「…え…?」
彼は白猿となってしまったロコの隣に座り、猿の肉を食べ始めた。
モコ 「うきーっ!さる美味いうきーっ!!
    …これでいいよな。うん…。」
彼の目は、猿を焼く炎に照らされて輝いている。
その輝きは2つに分かれ、その1つは頬を伝って地面に落ちる。
モコ 「お前達には先に進むという運命がある。
    だから、どんなに苦しい状況でも先に進むんだぞ…」
かるび「はい。頑張って焼き肉を探します。」
うな 「じゃあそろそろ行こうか…
    おっさん、いろいろありがとうな。」
3人はその場を後にして峠を下っていく。


うな 「…あ!!」
峠を下り終え、海に面する砂浜まで来たうなは突然声を上げる。
かるび「焼き肉があったんですか!?」
うな 「違う…
    俺達、どうやって海を渡ればいいんだ…?」
海の向こうには既に高い山のそびえ立つ島が確認できる。
だが、まさか泳いでは渡れまい。来た道を戻ることもできない。
かるび「海の水を飲み干しましょう。」
うな 「あのなぁ…」
その後、うなの説教が砂浜を流れる波のように続くはずだった。
それを中断させたのは一つの声。
 「お〜い、皆さ〜ん!!!」
そう遠くない場所から聞こえるようだ。
3人が辺りを見回すと、岩礁の辺りに見覚えのある姿…。
なんと、神竜の祠で出会った、サル時空でもすいか帽と共に戦ったあの神父だった。
…一緒に戦ったすいか帽はともかく、うなとかるびはあまり会いたくなかった。
神父 「皆さん、ご無事で何よりです。」
 「……」
神父 「皆さん、海を渡るのにお困りではないでしょうか?」
この言葉で3人の気持ちが一気に揺れ動いた。
うな 「何か方法があるのか?」
神父 「あちらをご覧下さい!!」
神父が手を手を差し伸べた方向にあったのは、一隻の船。
どうやら4、5人は軽く乗れる大きさのようだ。
かるび「食べられますか?」
神父 「…え?」
うな 「何でこんな所に船があるんだ?」
神父 「覚えていませんか?神竜様は…」

 「あぁーーもう怒った!!
  いいからこれをやるからどっか行け!!!
  空の手!!」

そう、あの時に神竜が言った「これ」が、今目の前に浮かぶ船だったのだ。
そうでもなければ、こんな日当たりのいい場所でこのような湿りきった船を見られるはずがない。
神父 「さぁ、早速乗り込んでここを離れましょう!」
これぞ渡りに船。
3人は気力を取り戻して船に乗り込む。
これからは竜の小玉を集めるために旅をすることになる。
今、竜の小玉は2個。
あと5つ集めれば夢は叶う。
そう心に言い聞かせながら…

戻るっ 次へ